「エテルノート」:アルゼンチン発のポストアポカリプスドラマが描く現実の暴力とパラノイア

ネオ・ブエノスアイレスの殺人雪

灼熱の夏の夜、ブエノスアイレスの地下室でトランプに興じる男たち。突然、街を覆う謎の雪。記録上3回しか降らない雪が、触れた者を即死させる殺人兵器と化す。主人公フアン・サルボは防水スーツとガスマスクを装備し、行方不明の元妻と娘を探して街へと飛び出す。

軍事独裁の影

1957年に発表されたアルゼンチン漫画の傑作『エテルノート』のNetflix実写化。原作者オエステルヘルドは1977年、軍事独裁政権によって4人の娘(うち2人は妊娠中)と共に「失踪」した。このシリーズの成功を受け、行方不明の孫たちの捜索が再開されている。

フォークランド戦争のトラウマ

現代版では、フアンのバックストーリーに1982年のフォークランド戦争が追加。軍人としての経験が生存者たちのリーダーとしての資質を与える一方、未解決のトラウマが幻覚を引き起こす。ニューヨークやロンドンではなく、アルゼンチンらしさを貫く舞台設定が新鮮だ。

ポストアポカリプスの先駆者

多くの終末ものドラマの原型となった本作だが、現代の視聴者にも衝撃を与える。最初の3話はややテンポが遅く、女性キャラクターの描写に物足りなさが残るものの、後半に向かって複雑さを増していく。すでに第2シーズンの制作が決定している。

ブエノスアイレスの建築から政治情勢まで、アルゼンチン固有の文脈を忠実に再現した本作は、単なるエンターテインメントを超え、暴力とパラノイアに満ちた現代社会を映し出す鏡となっている。