ネオ・トーキョーの闇を照らす生命の光
カリフォルニアのクラマス川流域で繰り広げられる、先住民ユロク族と科学者たちのサーモン救出作戦を捉えた写真シリーズが、地球写真賞2025のニューサイエンティスト編集者賞を受賞した。このプロジェクトは、失われつつある生態系と先住民文化の再生を象徴する、サイバーパンク的な現実世界の物語だ。
ダム撤去後の新たな戦い
クラマス盆地はユロク族の生活の中心であり、豊かな水域は文化的・精神的に重要なチヌークサーモンを育んできた。しかし200年以上にわたる植民地化と資源開発、気候変動により、サーモン個体数は危機的状況に追い込まれていた。2024年、ついに最後のダムが撤去されたが、今度は生態系モニタリングという新たな戦いが始まっている。
写真は、ユロク族の技術者ハンター・マッツがサーモンの鱗を拡大モニターで分析する様子を捉えている。このデータは死亡率の解明や漁獲制限の設定、産卵目標の決定に活用される。まるで未来都市のバイオスキャナーのように、一枚の鱗から生態系全体の健康状態を読み解く技術だ。
先端技術と伝統の融合
チームは回転スクリュートラップと呼ばれる特殊な魚トラップを使用。トリニティ川に設置されたこれらの装置は、サーモンの移動パターンや健康状態を調査する。さらに針のように細いタグを魚に装着し、個体追跡データを収集。このハイテク漁業は、失われた生態系のバランスを取り戻すための重要なステップとなっている。
マッツは太平洋河口から70km以上にわたる流域を調査し、地元住民の漁獲データを収集。これらの記録は海洋保護活動の資金獲得にも貢献している。まるで荒廃したメガロポリスを駆け巡るエコ・ハンターのようだ。
環境正義を求める先住民の闘い
写真家のヴィヴィアン・ワンは「ユロク族の強さと文化、クラマス盆地を守る戦いに対する敬意を感じてほしい」と語る。このプロジェクトは単なる環境保護ではなく、奪われた土地と文化を取り戻す先住民コミュニティのレジリエンスを映し出している。
受賞作品はロンドンの王立地理学会で展示後、英国各地を巡回予定。この写真シリーズは、破壊と再生が交錯する近未来の環境戦争において、人間と自然の新たな共生の可能性を提示している。