鋼鉄の月面着陸機、未知の領域へ
暗黒の宇宙空間を疾走する民間月面着陸機「レジリエンス」が、今週末に歴史的な挑戦を試みる。成功すれば、日本企業ispaceが運営する初の非アメリカ民間月面着陸機となる。2023年の初挑戦失敗から2年、改良を重ねた機体が再び月の重力圏に突入する。
苛烈な軌道計算と技術的挑戦
レジリエンスは1月15日、SpaceXロケットで打ち上げられて以来、月を越えて深宇宙へと飛行し、5月6日に月軌道に到達するという複雑な軌道を描いてきた。この迂回ルートは、未踏の地「フリゴリス海」北部平原への着陸に必要な計算だ。着陸シーケンスは6月5日19時20分(BST)に開始され、1時間後に決行される予定。
サイバネティックな科学ミッション
この鋼鉄の使者は6つの実験装置を搭載している。水を水素と酸素に分解する装置、藻類から食料を生成するモジュール、深宇宙放射線モニターなど、未来の月面基地建設を見据えた技術が詰まっている。さらに5kgの小型ローバー「テナシウス」を展開し、2週間にわたって月面探査と写真撮影を行う計画だ。
前回の失敗から進化したセンサー技術
ispaceは前回の着陸失敗(通信途絶による墜落)のデータを元に、レジリエンスのセンサーシステムを大幅にアップグレードした。しかし、時速数百kmから3分以内に完全停止するという技術的難題は変わらない。6月5日の着陸が困難と判断された場合、3つの代替着陸地点と日時が準備されている。
成功すれば、レジリエンスは今年2機目、史上3機目の民間月面着陸機となる。この挑戦は、新たな宇宙開発時代の幕開けを告げるサイバーパンクな叙事詩の一章として歴史に刻まれるだろう。