破壊の遺伝子が交わる時
フロリダの都市の影で、2種の侵略的シロアリが遺伝子を交配し始めている。フォルモサンシロアリとアジアシロアリ——どちらも木材を貪り尽くす破壊の化身だ。研究者たちは、この異種交配が生み出す「超シロアリ」が、より広範な環境条件下で繁殖可能な新種へと進化する可能性を警告している。
鋼鉄の街を蝕む影
2021年、フォートローダーデールのマリーナ近くで発見されたハイブリッド個体は、両種の特徴を併せ持っていた。2024年には台湾でも野生ハイブリッドが確認され、この遺伝子汚染が既にアジア圏に拡大していることが明らかになった。研究者チームは、これらのハイブリッドが第一世代で既に両親種との交配能力を持つことを突き止め、遺伝子の流動が加速する危険性を指摘している。
グローバル感染のシナリオ
フロリダの混血コロニーは、世界有数の繁忙港に隣接している。コンテナや貨物船に潜り込んだハイブリッドシロアリが、海を越えて新天地に侵入する可能性は極めて高い。年間400億ドルに上る既存のシロアリ被害が、さらに悪化するシナリオが現実味を帯びてきた。
終わらない進化の脅威
フロリダ大学のトーマス・シューベンク博士は「人類が無関心だった代償が今、形となって現れている」と警鐘を鳴らす。温度耐性を獲得したハイブリッド種は、従来の防除策を無効化し、コンクリートジャングルの奥深くまで侵食を拡大する可能性がある。この生物学的時限爆弾の爆発を食い止めるには、国際的な監視体制の強化が急務だ。
研究の詳細は『Proceedings of the Royal Society B』誌(DOI: 10.1098/rspb.2025.0413)に掲載されている。