核融合発電の未来を阻む「リチウムボトルネック」問題

核融合発電の未来を阻む「リチウムボトルネック」問題

ネオ東京の街を照らす無尽蔵のエネルギー源として期待される核融合発電。しかし、その実現には膨大な量の濃縮リチウムが必要であり、現在の生産量は全く足りていない。しかも、生産量を増やすためには有毒な水銀を使用せざるを得ないというジレンマに直面している。

リチウム-6の不足が招く危機

開発が進む最も一般的な核融合技術では、2種類の水素を融合させるためにリチウムが不可欠だ。特にリチウム-6と呼ばれる同位体は核融合反応を維持するのに最も効率的だが、自然界に存在するリチウムのわずか7.5%しか占めていない。核融合発電所が実用化されれば、1基あたり10~100トンの濃縮リチウムが必要となる計算だ。

冷戦時代の負の遺産

1950年代、アメリカ政府は核兵器生産のために442トンの濃縮リチウムを製造した。しかし、そのプロセスでは大量の水銀が使用され、環境汚染が今も続いている。現在、ドイツを中心にこの水銀ベースの濃縮技術を改良するプロジェクトが進められているが、根本的な解決には至っていない。

持続不可能な水銀依存

「短期的・中期的に十分な濃縮リチウムを供給できるのは水銀ベースのプロセスだけだ」と専門家は認める。しかし、大規模な核融合発電所網を支えるには明らかに不十分で、新たな技術開発が急務となっている。

未来への希望

微生物を使ったクリーンな濃縮方法など、代替技術の研究も始まっている。英国原子力庁はこうした新技術の開発を支援しているが、商業規模での実用化にはまだ時間がかかる見込みだ。

核融合エネルギーが現実のものとなるかどうかは、このリチウムボトルネックをどう突破するかにかかっている。科学者たちは時計の針と戦いながら、新たな技術革新を模索し続けている。