蛇と聖人の奇妙な共演
イタリアの小さな村コクッロでは、毎年5月1日に聖ドメニコ像が生きた蛇で飾られる異色の宗教行事が行われている。この「蛇捕り祭り」は数世紀の歴史を持つ伝統で、地元の無毒な蛇が聖像を彩る光景は圧巻だ。
科学者たちの挑戦
バーリ大学の生物学者ジャンパオロ・モンティナロ氏は、この祭りを研究の機会と捉えた。しかし、村人たちに研究が蛇に害を与えないことを理解させるのに数年を要した。法律で、蛇捕り人(セルパリ)は祭りの数週間前にのみ地元の蛇(緑色のムチヘビや四線蛇など)を捕獲できる。祭り後、蛇は捕獲場所に正確に放されるため、研究時間は限られている。
蛇の健康診断
研究チームは祭りの前に地元博物館を臨時の蛇診療所に変える。各蛇の体長・体重測定、スワブ採取、血液検査に加え、個体識別用マイクロチップを埋め込む。傷の治療や寄生虫除去(口内からも)も行う。
20年の研究が示すもの
20年近いデータは、これらの蛇が他のヨーロッパ個体群で見られる危険な真菌症にかかっておらず、健全な状態にあることを示している。モンティナロ氏は「蛇は地表の微生物を拾い上げるため、人間に感染する可能性のある新規病原体の監視にも役立つ」と指摘する。
この研究は伝統行事と科学の意外な融合例だ。蛇たちは文化的儀式に参加した後、元の生息地へと戻っていく。祭りは生物多様性保全の重要性を再認識させる、生きた教材でもある。