暗雲立ち込める宇宙探査の未来
ネオ東京の摩天楼を彷彿とさせるNASA本部に、未曾有の危機が迫っている。トランプ政権が提案したNASA予算の25%削減案は、火星サンプルリターン計画や小惑星アポフィス探査など、数々の野心的なミッションを暗礁に乗り上げさせようとしている。まるでサイバーパンクのディストピアのように、科学の灯が消えゆく悪夢が現実味を帯びてきた。
25%の予算削減が意味するもの
2026年度予算案では、NASAの予算が249億ドルから188億ドルに激減。科学予算はほぼ半減し、火星探査車パーサヴィアランスが収集した生命痕跡を含む可能性のある岩石回収計画や、木星探査機ジュノー、太陽系外縁を飛行するニュー・ホライズンズなど、進行中のミッションまでもが中止の危機に瀕している。ワシントン大学のポール・バーン氏は「健康な宇宙機の電源を切るようなものだ」と警鐘を鳴らす。
リーダー不在のNASA
混乱に拍車をかけるように、トランプ大統領はNASA長官候補だったジャレッド・アイザックマンの指名を撤回。アイザックマン氏は以前から予算削減に批判的だったことが関係しているとみられる。現在NASAには正式な長官がおらず、バーン氏が指摘するように「議会に対して予算削減に反論できる権限あるリーダー」が不在という危険な状況が続いている。
火星有人飛行への偏重
一方で、トランプ政権は火星有人飛行に向けて10億ドル以上を計上。スペースXCEOイーロン・マスクが開発するスターシップロケットとの連携が濃厚だ。しかし専門家の間では、基礎科学を犠牲にした有人火星計画の偏重に懸念の声が上がっている。
科学の未来を賭けた戦い
この予算案は7月4日までに議会で審議されるが、テキサス州など共和党の重要拠点への資金削減も含まれるため、最終的には骨抜きになる可能性もある。カリフォルニア州選出のゾーイ・ロフグレン議員は「NASAを下降スパイラルに追い込む」と強く批判。科学コミュニティと議会民主党は、この「科学への攻撃」に対して結束して戦う構えだ。
まるでAKIRAの世界のように、政治の荒波に翻弄される科学技術。人類の宇宙への夢を支えてきたNASAが、その存在意義を問われる重大な岐路に立たされている。ネオン輝く未来都市の陰で、静かに消えゆく星々の観測データ――その行方は、議会の審議にかかっている。