ダークマターで輝く「暗黒星」の初めての証拠を発見か?

ダークマターで輝く「暗黒星」の初めての証拠を発見か?

ネオ東京の摩天楼を超えるほど巨大な星々が、宇宙の暗闇を照らしている。しかしその輝きは、私たちが知る通常の恒星とは根本的に異なる。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えたデータから、ダークマターをエネルギー源とする「暗黒星」の存在を示唆する強力な証拠が見つかった。

暗黒星の理論

2007年、テキサス大学オースティン校のキャサリン・フリーズらが提唱した暗黒星理論は、ビッグバン直後の宇宙に存在した巨大な水素とヘリウムの雲が、自己消滅型のダークマターと混合することで形成されると考えている。通常、これほどの質量のガス雲はブラックホールに崩壊するはずだが、ダークマターの自己消滅が生み出すエネルギーがこれを防ぎ、核融合を伴わない恒星様天体が形成されるという。

JWSTによる発見

2022年以降、JWSTが観測したビッグバン後数百万年という極めて初期の宇宙に存在する異常に明るい天体の中に、暗黒星の特徴と一致する3つの候補が特定された。これらの天体は丸い形状や光の強度など、シミュレーションで予測された暗黒星の特性と一致していた。

決定的な証拠?

最新の分光観測では、さらに2つの暗黒星候補が発見され、うち1つには電子を失った特殊なヘリウムの存在を示唆するデータが得られた。「これが事実なら、暗黒星以外に説明のしようがない」とフリーズは語る。このヘリウムの特徴は暗黒星に特有のものと考えられている。

論争と意義

しかし、ポーツマス大学のダニエル・ウェイレンらは、ダークマターを必要としない超巨大原始星理論でも同様の観測結果を説明できると反論する。さらに、ALMA望遠鏡による観測で酸素が検出されたことは、暗黒星理論に疑問を投げかける結果となっている。

もし暗黒星の存在が確認されれば、JWSTが発見した初期宇宙の巨大ブラックホールの謎を解く鍵となる。通常のプロセスでは説明できないこれらのブラックホールが、暗黒星を「種」として形成された可能性があるからだ。フリーズは「未解決の天体物理学的問題に対する説明になり得る」と期待を寄せる。

ネオサイエンスの最前線で繰り広げられるこの発見劇は、宇宙の暗黒物質が織りなす新たな物語の始まりかもしれない。巨大な暗黒星が放つ不気味な輝きは、私たちの宇宙理解を根本から変える可能性を秘めている。