結核の驚異的な進化が明かす、古代病が生き残る理由
ネオ東京の暗い路地裏のように、結核菌は人類社会の影で密かに進化を続けてきた。この古代の病原体が現代でも猛威を振るう理由は、その驚異的な適応能力にある。
サイレントキラー
2023年だけで120万人の命を奪った結核は、HIVやマラリアの2倍もの死者を出している。世界人口の4分の1が感染しているこの病原体は、急速に都市を壊滅させる疫病とは異なり、長い時間をかけて静かに宿主を蝕んでいく。
空気を支配する進化
結核菌の最大の武器は、その空気感染能力だ。19世紀末、ロベルト・コッホは結核が埃を通じて感染すると考えたが、後の研究でこの仮説は覆された。1930年代、ウィリアム&ミルドレッド・ウェルズ夫妻は、結核菌が微小な飛沫に乗って何時間も空中を漂い、換気の悪い空間で新たな宿主に侵入することを証明した。
現代都市の死角
高層ビルの密室や地下街の換気不良な空間は、結核菌にとって理想的な狩場だ。特に人口密度の高いメガシティでは、この進化した病原体が効率的に拡散する。
起源の謎
長年、結核は家畜から人類に感染したと考えられてきた。しかし、1万年前の狩猟採集民の骨から結核の痕跡が発見され、この仮説は否定された。遺伝子解析によれば、むしろ人類から家畜へ感染が広がったことが判明している。
結核菌の驚異的な生存戦略は、単なる医学的問題を超えている。都市化が進む未来社会において、この古代の病原体がどのように進化し続けるのか、その解明が急がれている。