量子ビットのブレークスルー:エラー修正量子コンピュータの小型化が可能に

量子コンピュータの新たな進化

ネオンが輝く近未来都市の地下研究所で、量子革命の新たな可能性が生まれようとしている。カナダのスタートアップ企業Nord Quantiqueが、従来の数十万分の一の量子ビット数でエラー修正可能な量子コンピュータを実現する新技術を開発した。

量子エラー修正の壁

現在の量子コンピュータは、エラー修正のために数十万個の量子ビット(qubit)を必要とする。これは、量子情報を保護するために多数の冗長なqubitが必要だからだ。まるで壊れやすいデータを強化ガラスの箱に詰め込むような作業だ。

四次元に広がる量子記憶

Nord Quantiqueのチームが開発したのは、マイクロ波放射で満たされた超伝導キャビティ型qubit。ここでは光子が閉じ込められ、その量子状態に情報が記録される。特筆すべきは「マルチモードエンコーディング」技術で、光子の複数の特性を同時に利用することで、情報を四次元数学空間に格納することに成功した。

「これは各qubitを情報的に『大きく』するアプローチだ」とメリーランド大学の専門家は説明する。従来の超伝導回路型qubitを使ったマシンと比べ、最大50分の1のサイズで、消費電力も10分の1に抑えられると見込まれている。

残された課題

しかし、この技術が真に革新的かどうかを判断するには時期尚早だ。現時点では単一qubitでの実証実験しか行われておらず、実際の計算に使用された例もない。オランダ・デルフト工科大学の研究者は「他のアプローチと比べて本質的に優れているかはまだわからない」と慎重な見方を示している。

それでも、2029年までに100個以上の耐障害性qubitを搭載した実用的な量子コンピュータの開発を目指すNord Quantique。量子都市の夜明けは、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。