絶滅のカウントダウンを逆転させる挑戦
ネオ東京の摩天楼がそびえる近未来、人類はかつてない生物多様性の危機に直面している。しかし最新の研究によれば、第六の大量絶滅を防ぐことは、私たちが想像するほど困難ではないかもしれない。アリゾナ大学のジョン・ウィーンズらは、この問題を「年間100時間のランニング」と「1日15分のランニング」に例える。目標の設定次第で、不可能に思えた課題が現実的なものに変わるのだ。
大量絶滅の再定義
従来の定義では、地球の生物種の75%以上が失われる現象を「大量絶滅」と呼ぶ。しかしウィーンズは、この基準そのものに疑問を投げかける。たとえ現在の絶滅速度が続いたとしても、75%の種が消滅するには数千年かかる計算だ。つまり「大量絶滅を防いだ」と胸を張っても、その過程で半数近い種が失われる可能性がある。
より現実的な目標設定
研究チームが提案するのは、人間活動による絶滅率を0.2%以下に抑えるという具体的な目標だ。これは、1日100時間以上走るような過酷な挑戦に例えられるが、決して不可能ではない。重要なのは、遠い未来の大惨事を防ぐという曖昧な目標ではなく、今この瞬間に絶滅の危機にある種を救うことにある。
論争の先にある未来
このアプローチには批判もある。「大量絶滅」というラベルを否定することで、現在の生物多様性危機の深刻さが軽視される恐れがあるからだ。しかしウィーンズらは、困難ではあってもより正確な目標設定こそが、ネオ東京の闇に消えゆく無数の生命を救う道だと主張する。私たちは、簡単な道を選ぶべきか、それとも真に意味のある困難な挑戦を選ぶべきか──その選択が今、問われている。