米国初の女性宇宙飛行士サリー・ライドの感動的な軌跡を描くドキュメンタリー

宇宙に挑んだ孤高のパイオニア

1983年、サリー・ライドは米国初の女性宇宙飛行士として歴史に名を刻んだ。新作ドキュメンタリー『サリー』は、この偉大な女性の職業的功績と、27年間にわたるパートナーとの秘められた愛の物語を、アーカイブ映像と再現シーンを織り交ぜて情感豊かに描き出す。

男性優位の宇宙開発時代の壁

1976年、NASAが宇宙飛行士の多様化に踏み切ったことで、物理学博士課程在籍中のライドに扉が開かれた。8000人の応募者の中から選ばれた40人のうち、1500人が女性という熾烈な競争を勝ち抜いた。当時の宇宙開発は男性中心の世界で、女性飛行士は化粧や服装で女性らしさを控えめにするよう圧力を受けていた。

公私にわたる葛藤の記録

映画は、元同僚の宇宙飛行士や元夫の証言を通じて、ライドが直面した職業的困難を浮き彫りにする。特に印象的なのは、当初性差別的態度をとっていた同僚飛行士マイク・マレーンが後に深い後悔を表明する手紙を書いたエピソードだ。これは当時のNASAの文化的風土を象徴するエピソードとして強く印象に残る。

光と影に満ちたプライベート

13歳の時に出会ったタム・オショーネシーとの関係は、ライドの人生を貫く重要なテーマだ。LGBT+への社会的理解が乏しかった時代、2人は数十年にわたり関係を公にせず、静かに愛を育んだ。映画は2人が特別な思いを寄せたニール・ヤングの「Harvest Moon」などの楽曲を効果的に用い、その深い絆を描き出す。

最期まで貫いた信念

2011年、ライドは膵臓がんと診断される。ゴルフボール大の腫瘍が見つかってからも、2人は残された時間を精一杯生き抜いた。彼女の遺産は科学業績だけでなく、STEM分野の若い女性を鼓舞し続ける非営利団体「サリー・ライド・サイエンス」として今も息づいている。

このドキュメンタリーは、宇宙開発のパイオニアとしての功績と、時代の制約に抗いながら真実の愛を生きた女性の内面を、感動的に描き出している。サリー・ライドの物語は、今なお新たな世代に勇気とインスピレーションを与え続けるのだ。