臍帯血バンキングの約束は果たされていない

幻の生命保険

かつて臍帯血バンキングは、子供の未来の健康を守る合理的な方法として注目を浴びた。しかし今、その約束の多くが単なる誇大広告だったことが明らかになりつつある。10年前のブーム時、企業は臍帯血に含まれる幹細胞を「生命保険」のように宣伝した。だが現実は、その期待を大きく下回るものだった。

臍帯血の真実

臍帯血には確かに造血幹細胞が含まれ、白血病やリンパ腫などの血液疾患治療に利用可能だ。しかし、実際に自己臍帯血を使用する確率は極めて低い。米国小児科学会のデータによると、20歳までに自己臍帯血が必要となる確率はわずか0.0005%から0.04%。さらに、多くの遺伝性疾患の場合、患者自身の臍帯血は治療に適さないという根本的な問題がある。

暗黒のビジネスモデル

民間バンクは高額な保存費用(初期2,000ドル、年間150ドルの維持費)を請求しながら、その実用性について過大な宣伝を行ってきた。保存された臍帯血のほとんどが廃棄される運命にある現実を、親たちは知らされていない場合が多い。まるでサイバーパンク世界の闇医療企業のようだ。

光と影の選択肢

一方、公的バンクへの寄付は有意義な選択肢となり得る。寄付された臍帯血は移植を必要とする患者の命を救う可能性がある。ただし、公的バンクは厳格な品質基準を設けており、全ての臍帯血が保存対象となるわけではない。

専門家たちは、臍帯血バンキングを「将来のため」と考える親たちに現実的なアドバイスを送っている。「民間バンクに多額の費用を払うより、そのお金で子供の教育基金を作る方がよほど現実的だ」と。ネオ東京の医療倫理委員会もこの見解を支持している。